こんにちは。
愛媛県東温市(とうおんし)の移住・交流担当です。
東温市に移住された方に、その思いや移住までの道のり、これからの展望などをお聞きする「移住者インタビュー」。
今回は、平成30年1月から東温市で地域おこし協力隊として活動されている忠の仁(ただのじん)氏に、移住してからの生活や、協力隊活動についてお話を伺ってきました。
まず、移住(協力隊着任)までの道のりを教えてください。
僕の移住までの道のりは少し特殊なんですよ。
移住前は東京で芝居やミュージカルの仕事をやっていました。
一昨年ですが、砥部の町民ミュージカルに演出として呼ばれて、初めて愛媛に来ました。
僕は東京の人間だからか、地方に行くとすぐに飽きてしまうんです。
でも、愛媛は感じがよく、すぐに気に入りました。
東京に帰るときに、後ろ髪を引かれる感じがあったぐらいです。帰ってから知人にその話をすると、ちょうど今、東温市でアートヴィレッジ構想というものが進んでいて、その推進人材として地域おこし協力隊を募集していることを教えてくれました。
それまで地域おこし協力隊という制度があることも知らなかったのですが、愛媛でミュージカルの仕事に関われるならと応募を決めました。
移住後の生活はどうですか。
僕は古本屋に行くのが趣味なのですが、東温市には近くにないんです…。
東京暮らしだったために運転免許を持っておらず、長距離の移動もできないため、古本屋は諦めました。
ただ、もともとたくさんの古本の資料を持っていたので、現在はそれらで勉強しています。
古本屋がないことが、家に眠っていた資料を勉強する良い機会になりました。
東温市に来て良かったと感じることはありますか。
東温市は街並みがきれいですね。特にお花があるのが良い。
もともと東京、神奈川、埼玉にいましたが、どこも都会なので街に花がないんです。
東温市では一年中花があるのが本当にすごい。都会の友人にも自慢していますよ。
初めて愛媛に訪れたとき、お花にとまるモンキチョウを見てとても感動したのを今でも覚えています。
思い描いていた生活とのギャップはありましたか。
初めて訪れたときは砥部の公民館と宿との往復ばかりだったので、こちらでの生活はあまりイメージできていませんでした。
ただ、東京と違って人が優しく、親しみを感じられました。
その感覚だけで東温市に来ましたが、裏切られることはありませんでした。
また、地方の街は一般的に新しいものに対して拒否反応を示すことが多いと聞いていました。
新しいものをなかなか受け入れず、古い上着を脱がないと。
外部の人間に対しても構える人が多いとも聞いていたので、僕が中に入ってきたときに受け入れてくれるのか不安でした。
でも温かく受け入れてくれたので、とても嬉しかったです。
一日オフのときにはどのように過ごしていますか。
決まった過ごし方はないですね。ただ、グータラしています。
でも、最近は忙しくてあまりグータラできてないんです…。
ペンネームの「忠の仁」の意味を教えてください。
本名は「石田仁」(いしだひとし)です。まず、「ひとし」という読みが嫌だったんです。「じん」の方が良かった。
だから、中学と高校では入ってすぐに友人達に、「じんって呼んでくれ。」と言っていました。
おもしろいのが、卒業式で卒業証書授与の際に担任の先生が僕のことを、「いしだひとし」って呼ぶわけですよ。
すると、周りの友人たちが声をあげてびっくりするんです。
舞台芸術の仕事を始めた際、妻が姓名判断に凝っていたんです。
その妻が、「石田仁」は画数が非常に良くないと言うんです。
ただ、「じん」という読みは気に入ってたので、○○仁で考えていました。
異邦仁、クロマニョン仁、こっぱみ仁…個人的にはこっぱみ仁が気に入っていたのですが、周りに猛反対されました。
最後には何も思い浮かばなくなり、「もう、仁でいい。ただの仁でいい!」と言ったんです。
すると、「ただのじん」という響きがスッと入ってきたんです。画数も悪くない。
それで「ただのじん」に決めたんです。
書きは「忠野仁」だったんですが、チラシに名前が載った際に埋もれてしまい、目に入らなかったので、「の」をひらがなにすることにしました。
また、「忠」の字は演出家である、鈴木忠志氏から取りました。
地域おこし協力隊としてのメインの活動は?
やはり芝居やミュージカルをつくって、東温市の人に芸術に触れてもらうことです。ただ、これから力を入れたいことがもう一つあります。
ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者でウエストサイドストーリーの作曲などもしている、レナード・バーンスタイン氏は、あなたがこれからやりたいことはなんですか、と聞かれた際に、一言で、「Education(教育)」と答えたんです。
僕もそう思っているんです。
次世代のスタッフやキャストの人材を育成し、ミュージカルの明日を切り開く「教育」の仕事をしたいと考えています。
担当しているとうおん舞台芸術アカデミーも、東温市のアート文化を盛り上げるために頑張ります!
仕事をするうえで、やりがいを感じることはありますか。
まだない!これからです!!
キレイな言葉で述べればあるでしょうが、本当の意味で感じているかといえば、まだそこまで至っていないですね。
一押しの企画を教えて下さい!
ぜひお勧めしたい企画が2つあります。
1つ目が、「ミュージカル・ガラコンサートin坊っちゃん劇場」です。
今年が2回目の開催になりますが、去年の第1回公演では天気が悪いにもかかわらず、多くの方に足を運んでいただきました。
今年は、僕が日本一のミュージカルスターだと思っている島田歌穂氏も出演します。
東京では有名な女優なのですが、愛媛県での知名度はいかほどか。
とにかく東温市の人たちに、本物の素晴らしさを知ってほしいです。
2つ目が、「人形の恋物語」です。こちらは僕の変態的な趣味です。(笑)
ある日、シアターに来た際にちっちゃな宣伝チラシが目に入りました。
それは高畠華宵大正ロマン館のもので、東温市にあるということを初めて知りました。
僕は、もともと高畠華宵の絵が大好きだったので、もう、愛媛には呼ばれたのだと思いました。
後日、早速、現地に行きました。
そしたら、なんとそこに球体関節人形があったんです!実は僕、球体関節人形も大好きなんです。
東京でも人形の演劇をやりたかったんですが、変態扱いをされて実現できませんでした。
ですので、今回は念願の企画なんです。照明、音響、美術など、こだわり出したらきりがないです。ぜひその妖艶さに注目してほしいですね。
最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
「こんなに生活が苦しいのに、何で芸術なんかに接する余裕があると思っているんだ。」と聞いてくる人がいます。
しかし、外国では生活よりも芸術が優先されるんです。
外国の首脳会談では必ずオペラの話になる。オペラを知らない首脳はダメだと言われるぐらいです。
南米のとある国では、災害から復興するのに一番最初に作られたのが、オペラハウスだったそうです。
芸術に関する考え方が違うのでしょうか。たしかに生活を送るだけであれば、芸術なんていらないです。
でも、人間が生きていくうえで重要なものであると確信しています。
それをどうにか分かってもらわないと、いくら声高に叫んでも東温市の人は振り向いてくれない。
では、どのように盛り上げていくのか。良いものを見てもらえば気持ちが動くのかな、と考えたりしています。